20年以上前、私には今でも忘れられない部下がいました。
仕事ができて、お客様への対応も丁寧。
そんな優秀な部下には、当時の職場では少し目立つ特徴がありました。
休憩時間をきっちり守ることです。
当時の職場では、昼休憩を十分に取れないことも珍しくありませんでした。
私は、その部下の意見をきっかけに、職場の働き方を変えることにしました。
その後、チームは全社1位の成果を出すまでになりました。
もちろん、休憩時間の改善だけが理由ではありません。
しかし、この経験は、私の管理職としての考え方に大きな影響を与えました。
今回は、20年以上前に部下から教わった大切なことを書いてみたいと思います。
異動してすぐに目にした、休憩も取れない職場
20年以上前、私はある職場に異動しました。
そこで驚いたのが、昼休憩の取り方でした。
会社で決められた昼休憩は、12時から13時までの1時間。
しかし、お客様が来ていれば、12時ちょうどに休憩へ入れるとは限りません。
12時15分、12時30分と仕事が長引くこともあります。
ところが、休憩に入るのが遅くなっても、午後の仕事は13時から始まります。
つまり、仕事が長引いた分だけ休憩時間が短くなっていたのです。
昼食を外に食べに行くこともできず、自分の席でおにぎりを食べる人もいました。
カップラーメンにお湯を注いだ瞬間、お客様への対応が入る。
仕事を終えて戻ってきた頃には、ラーメンがまるでうどんのように伸びている。
そんな光景もありました。
今考えれば、おかしな働き方です。
でも、当時の職場では、それが当たり前になっていました。
仕事ができる部下は、自分の時間も大切にしていた
そんな職場に、一人の優秀な部下がいました。
仕事の能力が高く、責任感もある。
自分の意見をしっかり持ち、自分で考えて行動できる、頼りになる存在でした。
一方で、休憩時間については、はっきりした考えを持っていました。
仕事をするときは、しっかり働く。
休憩時間になれば、きちんと休む。
周囲が休憩時間を曖昧にして働いている中で、その姿勢は目立っていました。
そして、その部下が休憩時間について、私に意見を伝えてくれたのです。
私自身も、仕事と休憩はきちんと分けるべきだと考えていました。
しかし、お客様を相手にする仕事だから仕方がないと、どこかで思っていた部分もあったのかもしれません。
部下の意見を聞いて、改めて考えました。
休憩時間は1時間と決められているのに、なぜ1時間休めないのだろう。
お客様への対応が必要なのは当然です。
でも、それを理由に部下の休憩時間が削られていいわけではありません。
それなら、管理職である自分が改善すればいい。
そう考えました。
休憩が15分遅れたら、終了も15分遅らせる
私が始めたことは、とてもシンプルでした。
全員がきっちり1時間の休憩を取れるようにすることです。
例えば、12時から休憩に入る予定だった部下が、お客様への対応で12時15分になったとします。
これまでは13時に仕事に戻っていたため、休憩は45分しか取れませんでした。
そこで私は、休憩の開始が遅れたら、終了も同じだけ遅らせることを徹底しました。
- 12時に休憩開始なら、13時まで
- 12時15分に休憩開始なら、13時15分まで
- 12時30分に休憩開始なら、13時30分まで
仕事の都合で休憩に入るのが遅くなっても、必ず1時間を確保する。
休憩時間を1分たりとも削らない。
それを職場の当たり前にしました。
部下が休憩に入れるように、自分も仕事を手伝った
もちろん、ルールを決めるだけではうまくいきません。
お客様が集中すれば、なかなか休憩に入れない部下も出てきます。
そんなときは、私が仕事を手伝いました。
休憩時間が近づいている部下が、まだ仕事を抱えている。
私が対応できる仕事なら引き受ける。
少しでも早く休憩に入れるようにする。
管理職だからといって、部下に指示するだけではありません。
自分が動けば解決することなら、自分が動けばいい。
私は、そう考えていました。
そして、もう一つ徹底したことがあります。
部下全員の休憩が終わった後、最後に私も1時間休むことです。
管理職だから休まなくてもいい。
上司は部下より長く働くべきだ。
そんな考え方はしませんでした。
上司が休まず働いていると、部下も休みにくくなるものです。
部下には休めと言いながら、自分は休まない。
それでは、言っていることとやっていることが違います。
全員が休む。
自分も休む。
それを当たり前にしたかったのです。
小さな改善が信頼につながり、チームは全社1位になった
この改善をきっかけに、私に対する部下からの信頼は大きく高まったと感じています。
異動してきたばかりの上司が、現場の意見を聞いて、実際に働き方を変える。
しかも、口で言うだけではなく、自分も仕事を手伝う。
そんな行動を見て、少しは信頼してもらえたのではないかと思います。
私は、管理職にとって信頼関係は何よりも大切だと考えています。
どれだけ立派なことを言っても、行動が伴わなければ信頼されません。
反対に、小さなことでも約束を守り、行動すれば、信頼は少しずつ積み重なっていきます。
その後、私たちのチームは仕事でも大きな成果を出すようになりました。
最終的には、全社1位を獲得するほどのチームになったのです。
もちろん、休憩時間を改善したから全社1位になれた、という単純な話ではありません。
部下それぞれの努力があり、仕事の進め方にもさまざまな工夫がありました。
でも、働く環境を整え、信頼関係を築けたことも、その成果につながったと私は考えています。
管理職は、部下に成果を求める立場です。
しかし、成果を求めるばかりでは、人はなかなか力を発揮できません。
まずは、安心して働ける環境をつくる。
部下の意見に耳を傾ける。
そして、自分も一緒に行動する。
部下を大切にすることと、仕事で成果を出すことは、決して矛盾しない。
私はこの経験から、そう学びました。
管理職だからといって、何でも知っているわけではない
振り返ってみると、今回の改善は、優秀な部下が意見を伝えてくれたことから始まりました。
もし、その部下が何も言わなければ、改善するのはもっと遅かったかもしれません。
管理職になると、部下を指導する立場になります。
でも、管理職だからといって、すべてのことを知っているわけではありません。
経験が長くなるほど、自分が当たり前だと思っていることを疑わなくなる場合もあります。
だからこそ、部下の意見を聞くことが大切なのだと思います。
年齢も役職も関係ありません。
正しいことは正しい。
改善すべきことは改善する。
私は、そんな管理職でありたいと考えてきました。
そして、34年間の会社員生活を振り返ると、部下から教わったことは本当にたくさんあります。
管理職は部下を育てる立場ですが、部下から育ててもらうことも多い。
この経験は、そのことを強く感じた出来事でした。
54歳になった今、改めて思うこと
現在54歳。
34年間勤めてきた会社を休職し、これからの働き方を考えています。
若い頃の私は仕事が大好きで、長時間働くことも苦になりませんでした。
仕事で成果を出すことが楽しく、その経験を後悔しているわけではありません。
ただ、今は考え方が変わりました。
仕事も大切ですが、自分の時間も同じくらい大切にしたい。
20年以上前、あの部下はすでにそれを実践していました。
当時の私は、仕事を頑張ることには自信がありました。
でも、自分の時間を大切にするという点では、あの部下の方がずっと先を歩いていたのかもしれません。
34年間の会社員生活で、多くの部下と出会い、たくさんのことを教わりました。
管理職は部下を育てる立場ですが、部下から育ててもらうことも多いものです。
あの部下に教わったことは、20年以上たった今でも、私の中に残っています。
そして、これからの人生では、あの部下が大切にしていた働き方を、私自身も実践していきたいと思っています。

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